for God’s sake



<4>



先輩に買ってもらった初めての馬券。
自分のお金で買いたかったけれど未成年だからと先輩に止められた。
変なところで真面目な先輩がおかしかった。
『ゴッドオブチャンス』と書かれた単勝馬券。
『チャンスの神様』・・・名前も気に入った。
彼は、スタートした後、ポンと先頭に立ち、そのまま先頭でゴールに入った。圧勝だった。
「麻野、すげーじゃん!また当たったよ?マジすげー」
先輩は、ウィナーズサークルと呼ばれる表彰をする場所に連れて行ってくれた。
ぼくは感動していた。有言実行の彼に!
汗をしたたららせて彼がやってきた。
その汗が、彼の栗色の馬体をより輝かせていた。
誇らしげにカメラにポーズをとる。
サラブレッドは崇高な生き物だとよく言われるが、その通りだと思った。
それほど、彼は気高い雰囲気を漂わせていた。
ぼくは、彼をうらやましく思った。
自分を誇れる彼を・・・・・・

「麻野、こいつは、これからクラシック路線に乗るかもな」
「クラシック?」
「そう、クラシックレースてのがあるんだ。3歳馬しか出られないレース。有名な天皇賞とか有馬記念なんてのは何歳でも何回でも出られるんだけど、クラシックはそうは行かない。ダービーとか知ってるだろ?」
「名前だけは・・・」
「あれもクラシックレース。牡馬は皐月賞・ダービー・菊花賞。その中でも最大の目標はダービーなんだ。こいつはこれからダービー目指して走り続けるんだ。血統もいいから期待できるかもよ?麻野、こいつ気に入ったんだろ?」
「どうして?わかりました?」
「すごい真剣に見てたもんな。ハート飛ばしてるんじゃないかって気が気じゃなかったよ。おれ、馬に嫉妬なんてしたくないかなら?」
嫉妬?嫉妬・・・って・・・?
はははと大笑いしている先輩に、ぼくは冗談はやめてくださいと、心にもないことを言った。
ほんとはうれしいのに・・・ぼくをからかう冗談であってもうれしいくせに・・・・・・
結局、彼の単勝には、870円の配当がついた。
だけど、ぼくは換金しなかった。
なぜなら、彼に申し訳ない気がしたから・・・一生懸命走った彼に・・・・・・

                                                                       




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